「桐島、部活やめるってよ」:読書感想文

お知らせ:2020年8月17日更新→

朝井リョウのデビュー作「桐島、部活やめるってよ」の感想文です。合計で2633字あります。最初と最後は全体の印象について、中盤は各章のあらすじと感想を書いています。好きな章を抜き出して、文字数を調整してください。
ふだん本を読んでいない高校生の気持ちで書いているつもりです。

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私はふだん本をほとんど読まないので、私にとって読書感想文を書くのはとてもつらい作業だ。まずは本を選ばなくてはならない。考えることは皆同じだと思うが、本は薄くて、簡単に読めそうなものがいい。そこで手にとったのが、これだ。映画にもなったので、タイトルは私でも知っている。作者は朝井リョウ。この本は彼のデビュー作で、賞も取っているいうことだ。この作家について調べたら、これを書いたのは彼が大学に在学中だというということ。すごいなあ、大学生で作家か、と思った。しかも早稲田大学だ。頭いいなぁ。

タイトルに桐島とあるから桐島の話だと思う。でも、実は桐島は最後まで出てこない。えっ、こんなのってありなの?この本は、桐島がバレー部をやめるということによる登場人物たちへの影響、状況や気持ちの変化の話だ。5人の登場人物の話が6つの章に分かれている。短編小説のようで、とても読みやすい。なんか私は読みやすいということばかりに頭がいってしまっている。

この本の登場人物は17歳の高校生たち。17歳は子供の終わりで大人のはじまり。彼らはその分岐点にいる。すでに次のステージ、大人に向けて自分が夢中になれるもの、自分が将来なりたいもの見つかった人がいる。まだ、高校という極めて狭い世界の中にとどまっている人もいる。その瞬間をとても上手に描いている。

(以下各章のあらすじとそれに対する感想を書いています。気に入った章を使ってください)

まずは第一章の「菊池宏樹」から。これはオープニング。まず気づいたのは、登場人物のセリフがなんか変だ、ということ。どこかの方言かな。作者が岐阜出身だからそのあたりの言葉だろうか。また、なんというのだろう。文章から場面が写真のように細かく想像できる。自分が文字から場面を想像できるなんて思っても見なかった。いつもテレビとかユーチューブとかを見慣れているから、ちょっと新鮮だ。

(中京地区の人向け)
(まず気づくのが登場人物が名古屋弁を使っている。作者が岐阜出身だからだろう。一気に親近感が出てきた。)

第二章は「小泉風助」。バレー部のリベロのポジションで補欠。桐島はバレー部のキャプテンで、風助と同じリベロのポジション。つまり風助は桐島に何かがなければ、試合には出ることができない。部活で補欠は嫌だよね。風助は背が低いけど運動神経がいいという設定。ポジションが同じなので、風助と桐島は練習でもペアを組んでいた。試合で桐島にキャプテンマークのテープを貼り付けるのも風助。貼り付けた背中を叩いて感じる桐島の存在。桐島が部活を辞めて、副キャプテンがキャプテンになって、風助は補欠からレギュラーに昇格。嫌なヤツと思われたくないから、嬉しい気持ちを抑えようとしているけど、抑えられない、というのがとてもよく伝わってくる。ああ、風助の気持ちがよく分かるよー。風助は自分ならもっと活躍できると思っていた。そして風助レギュラー初の試合。でも思っていたようには全然体が動かない。桐島のようには全然動かない。自信を失いそうになるが、試合中に取り戻す風助。頑張れ風助。部活っていいですね。

第三章は「沢島亜矢」吹奏楽部の部長。サックス担当。典型的な文化部の女子だ。彼女は密かに好きな男の子がいる。いつもその彼が放課後にグラウンドでバスケットボールをするのを見ながら楽器の練習している。そして、亜矢が意識しているのは同じクラスの志乃だ。志乃は亜矢よりかわいいみたいで、亜矢は志乃に嫉妬している。しかも自分の好きな竜汰と軽く話したり、彼のことを好きだ、と言うから、悩みまくる。うんうん、その気持よくわかるなぁ。また、亜矢はクラスの中のグループ、いわゆるスクールカーストについて語る。その視点はとても客観的だ。読んでいくと亜矢もカースト上位で、かわいいみたいだからそんなに悩むことないのに、なんて思う。

第四章は「前田涼也」。涼也は映画部。文化部の男子。スクールカーストの下位。彼には同じ中学だった、かすみという同級生がいる。かすみは映画が好きで、涼也とは映画も見に行ったりしてた仲だ。でも、高校に入ってからは疎遠になった。かすみは成長してきれいになって、上位カーストになってしまい、涼也は話もすることはない。でも、お互いになんとなく意識しているのが伝わってくる。作者は男の人ですよね?このあたりの細かい気持ちを表現するのがとてもうまいです。涼也の映画部が、ふとしたきっかけでかすみのいるバトミントン部を撮影する。カメラ越しに見るかすみ。涼也がまだ、いや、むしろかすみのことがもっと好きなんだと伝わってくる。涼也は今度会って、かすみに伝えようと決心する。ああ、いいなぁ。

第五章は「宮部実果」。ソフトボール部で明るく振る舞っているが、実は誰にも言っていないことがある。事故で実の父親と義理の姉を亡くしているのだ。そして事故のせいで、唯一の肉親である継母が精神をおかしくしてしまい、実果のことを死んだ姉だと思っている。実果は家ではその姉として振る舞わなければならない。姉はソフトボールも勉強もできたので、実果は劣等感を感じている。この設定はとてもつらいです。実果はクラスではカーストの上位にいる。でも、カーストやその中心の梨紗のことを客観的に見ている。客観的になってしまう理由が読者にはよくわかる。

最後の章はふたたび「菊池宏樹」。イケメンで、運動神経抜群で、カースト上位。彼女もカースト上位。でも、何かにイライラしている。所属する野球部の練習には出ていないし、彼女のことはそれほど好きではない。客観的に物事を見ている。映画部の涼也の、好きなことに夢中になるひたむきさに心を打たれる。宏樹がいう。「レンズをのぞく二人の横顔はひかりだった。」私にはこの場面がよくイメージできた。映画部の涼也がカメラ越しにみつめるかすみ。好きなことをして、好きな子を見つめる涼也。好きと好きが重なって光を放つのだ。このことをきっかけに宏樹は野球部に戻る決心をする。

(付け加えるといいもの)
(個人的には私はこの章が一番気に入った。〇〇に感情移入してしまった。)

読者は神の視点なんだと思う。登場する人物は実は両思いだったり、付き合っているけどすでに気持ちが離れていたりする。それは読者しかわからない。「おい、お前たち、両思いなんだから告白しちゃえよ」といいたくなる。

この本は子供から大人、高校という狭い世界から広い世界への転換点としての17歳の気持ちを切り取っている。彼らの気持ちは単純なものではない。他人には知られていない悩みを抱えていたり、華やかに見えて、実はこころの中では違っていたり、と人間の表と裏を描いている。ひとことで読んで良かったと思う。ちょっと泣きそうになったところもあったし。これを機会に本も読んでみようかと思った。

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